斜陽の窓辺

多くの人の目に触れると都合の悪い人生。

2年生

引っ越して来た。

多分、2年生の夏休みが終わってから別の小学校へ編入したんだ。


その小学校では何人かの小人が居るとか、理科室のホルマリン漬けの標本が動き出すとかそんな噂があって、学校全体が何だか不思議な雰囲気の記憶に塗り替えられている。


校門の前ではピンクやグリーンのカラフルなヒヨコが売りに出されていた。

このヒヨコを思い出す時、必ずセットで思い出すのが「積木くずし」のラリった女にスプレーでピンクに塗りたくられた猫だ。


「石鹸てさ、チーズの味がするんだって!」と言われた私は、家に帰ってから石鹸をカッターで切って食べてみた。

ただただ苦いだけだった。


テレビではドリフターズの「8時だョ!全員集合!」がやっていた時期だろうか。

本当に胡椒でクシャミが出るのだろうか? と思い胡椒を目の前に降り出して思いっきり吸ってみたりした。

鼻の奥がツーンとして痛くてクシャミどころではなかった。


この頃は、引っ越して知ってる人が居ないから寂しいとか、そんな事は考えていなかった。

家に帰るとお婆ちゃんがおやつを作って待っていてくれた。

学校が変わったからといって、特に混乱も戸惑いもなかった。


自分の家に起きていること、自分の人生が少し良くない方へ傾いていっていること、何も理解していなかったのだ。

無知で周りが見えず理解力のない子供だったのだ。