斜陽の窓辺

多くの人の目に触れると都合の悪い人生。

〜 5年生〜-3

※〜6年生-1の見出しのみ修正しました。修正前に読んでいただいた方、中身は同じです。



4年生〜5年生〜6年生の記憶は歪んだ時空を行き交う景色と音と匂いと息苦しさの記憶。


教室には一日中陽の光が入らず、記憶にある雰囲気はジメジメとして人の声がヒソヒソと聞こえるような場所。

ノートをとりながら黒板に目をやる。

クラスメイトと目が合う。

またヒソヒソとクスクスと、隣の席の子と私のことを話をしていることがわかる。

チラチラとこちらを見ながら、それが良い話ではないことも容易に理解ができる。


猫は他の猫と目が合うと、攻撃の意思はないと相手に伝えるために目を逸らすらしい。

無駄な争いで傷付くことを避けるのだ。

自ら治癒できない傷を負うことは命取りで、大切な命を互いの思い違いや相手への軽薄さで失うような下らない世界で生きてはいない。


しかし、私たちは簡単に命を失うような甘くて生温い世界に生きている。


私はクラスメイトと目が合う度に、「攻撃の意思はないから攻撃しないでね」という意味を込めて微笑みかける。

これが何とも気味の悪い姿に映っていたのだろう。

「4年生〜」で述べたように、髪はボサボサでくせ毛に絡みついたフケが浮き立ち、爪は伸びっぱなしで薄汚れたような肌の色、虫歯で隙間の空いた前歯をチラつかせながら、虐められる要素を分厚く纏った私がニッと笑う。

恐ろしい不吉な笑顔。

目が合えば呪われるような不気味さ。


いつものように攻撃されている時に言われた言葉がある。

「目が合うと笑うの、気持ち悪いからやめて欲しいんだけど」


教室にいる殆どの時間を目が合わないように俯いて過ごす。

もちろんノートはとらず、授業も耳に入らない。

宿題も出たのか出てないのかわからない。

こうなるともう色んなことが面倒臭くなる。

授業なんか受けなくて良いし宿題もやらなくて良い。

ただただ黙ってやり過ごしていた。


特に勉強が好きだったわけではない。勉強をやらなくても良い絶好の口実が出来上がった。


勉強をしようとすると、みんなと目が合って迷惑になるからや〜らないっ!


馬鹿は地の果てまで馬鹿で、私の馬鹿は本能で馬鹿なのだ。